個人事業主や1人社長、小規模企業の役員の方などに活用されている小規模企業共済。じつは小規模企業共済は掛金の範囲内で融資が受けられる借入制度があり、うまく使うと無担保・無審査で手元資金が増やせます。
本記事では、小規模企業共済の借入制度の概要やお得と言われるポイントを解説します。
そもそも小規模企業共済とは?
小規模企業共済とは、個人事業主やその共同経営者、小規模企業(従業員5人以下または20人以下、業種により異なる)が加入できる中小機構の共済制度です。
加入すると以下のようなメリットがあります。
対してデメリットは以下の3つのみです。
積み立て時は所得控除が、受取時は退職所得控除や公的年金等控除が使えるため、iDeCoに並ぶ節税対策に位置づけられます。
会社の退職金がない人は、無理のない掛金で加入しておきたい制度と言えるでしょう。
参考:中小機構|共済サポート navi|小規模企業共済の魅力について
困ったときに使える小規模企業共済の貸付制度
小規模企業共済には、これまでの掛金の範囲内(掛金の7〜9割※)の金額を、利息1.5%(年)で借入ができる貸付制度があります。
借入の要件は以下の2つのみです。
- 加入後、貸付資格判定時(4月末日および10月末日)までに、12か月以上の掛金を納付していること(ただし、前納掛金は含まない)
- 納付した掛金から算定した貸付限度額が、貸付資格判定時において10万円以上に達していること。
掛金の範囲内という制限はつきますが、無担保・無審査・保証人なしで借入可能です。
「事業資金にまとまったお金が必要だが銀行に融資を断られた!積み立てている共済金を使いたいが、いま解約すると元本割れしてしまう!」という状況になったときに助かる制度です。
※正確な貸付限度額は、加入後に送られてくる『掛金納付状況及び貸付限度額等のお知らせ』に記載されている。
お得に融資が受けられる?貸付制度のポイント
小規模共済の貸付制度がお得と言われるポイントを紹介します。
ポイント1:更新手続きをすれば退職するまでずっと借り続けられる
小規模企業共済の貸付制度は、返済期日がきても、そのタイミングで同額借換ができます。
つまり100万円を1年間借りていた人は、返済期日までに“100万円を返済する手続き”と“新たに100万円を1年間借り入れる手続き”をすることで、返済期日を繰り延べられるのです。
その都度利子の前払いは必要ですが、同額借換に回数の限度はないため、利息1.5%で長期借入するのと同じ状態にできます。
ポイント2:増額借換が可能
小規模企業共済の貸付制度では、借り換えのタイミングで借入額の増額が可能です(減額借換も可能)。
たとえば1年目で100万円借りて、借換手続きのときに100万円返済する手続きと新規で200万円借り入れる手続きができます。
共済金の積み立てを継続していれば、借り入れできる枠は増えていくため、借換のたびに増額することも可能です。節税メリットを受けつつ事業の手元資金を増やせます。
ポイント3:借入金の使途が自由
借入金は、事業の運転資金や生活資金に利用できます。使い道に関する申請はなく、仮に窓口で質問されても「運転資金に使用する」など簡単に回答するだけで済むため、自由度の高い資金調達が可能です。
極端に言うと、投資で資産を増やすのにも活用できます。利息1.5%を超える利回り(正確には「1.5% − 共済の予定利率」)で運用できる前提ではありますが、社会保険料や所得税の減税を受けつつ投資するという、iDeCoのような使い方も可能です。
注:投資には元本割れのリスクがあります。本記事は上記の方法を推奨するものではありません。
ポイント4:最終的な返済は掛金と相殺できる
いざ返済となったとき、もし返済用の資金が用意できなくても、これまで積み立てた掛金と相殺できます。借入できる金額が積立金の範囲内に限定されるため、相殺時に足がでることは基本的になく、家族に迷惑がかかる心配もありません。
ただし、借入額との相殺で実際に受け取る金額が小さくなっても、課税所得金額の算出には相殺前の満額が用いられます。
たとえば100万円借り入れしていて、廃業に伴い300万円の共済金を一括で受け取った場合、退職金300万円を受け取ったとして退職所得が計算されます。よって納税資金の確保は必要です。
貸付制度の注意点は延滞利子
小規模企業共済の貸付制度にデメリットはほとんどありません。ただ、延滞利子だけは注意が必要です。
小規模企業共済では、借入の返済期間を過ぎたときには、ペナルティとして年14.6%の延滞利子がかかります。
延滞利子=返済額✕0.146÷365日✕延滞日数
借換手続きは返済期日の翌月末まで可能ですが、できるだけ返済期日は過ぎないようにしたいところです。
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