水不足で注目される水ビジネス関連銘柄は?投資信託や海外ETFも紹介

水不足金融

日本にいると実感が湧きませんが、じつは世界中で水不足が問題になっているのをご存じでしょうか?

世界人口は2050年までに97億人に達すると予測され、その半数以上が水不足のリスクに晒されるといわれています。

持続可能な水資源の確保は世界全体が取り組むべき課題であり、注目せざるを得ないテーマといえるでしょう。

そこでこの記事では、次のことを紹介します。

  • 水不足の現状や日本の水処理技術
  • 市場規模110兆円ともいわれる水ビジネス関連銘柄
  • 水ビジネス関連企業に投資できる投資信託と海外ETF

水不足

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世界の水不足の現状

国際NGOのWaterAidが2020年にまとめた資料によると、2050年には世界人口の約半分、50億人以上が深刻な水不足に陥るとのこと。

水不足は生活の不便さだけでなく、下記のような問題も引き起こします。

  • 農業や畜産業への影響による食料不足
  • 水を利用する工業やエネルギー分野への悪影響
  • 水資源を巡る紛争

実際、2021年3月には台湾で深刻な水不足が発生し、TSMCなどの半導体製造施設を含む地域一体が影響を受けました(参考:Bloomberg「台湾の水不足深刻化、非常警報も発令-TSMCはタンクローリー活用」より)。

生活用水はもちろんのこと、製造業の工場や発電施設でも大量の水が使われています。水不足を放置すると、人々の暮らしだけでなく経済への悪影響にもつながるのです。

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注目される日本の水処理技術

世界の水不足問題に対し、日本はどのような形で貢献しているのでしょうか?日本の水処理技術は世界一といわれ、世界中で技術が導入されています。

代表的な技術は下記3つです。

  • 海水淡水化技術:海水を真水に変える技術。海水淡水化はRO膜(逆浸透膜)と呼ばれるろ過膜を使ったRO法が主流で、このRO膜の製造は日本の素材メーカー三社(日東電工、東レ、東洋紡)が世界シェアの半分を占めている。
  • 生物浄化法(EPS):微生物を使った浄水方法。砂利や微生物を入れた浄化槽で水をきれいにする。低コストで導入できるため、発展途上国でよく使われている。
  • 下水の浄化処理技術:下水を再利用する方法。RO膜でろ過した下水を、MBR(膜分離活性汚泥法)で処理する。水資源の少ないアフリカや中東などで導入が進んでおり、RO膜・MBRともに日本の技術が使われている。
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水ビジネス関連銘柄

経済産業省の資料によると、水ビジネスの市場規模は2030年には110兆円に拡大すると試算されています(参考:経済産業省「⽔ビジネス海外展開施策の10年の振り返りと今後の展開の⽅向性に関する調査」より)。

水ビジネスは、下記のように分野が多岐に渡ります。

  • 上水設備関連
  • 下水設備関連
  • 産業用水関連
  • 海水淡水化設備
  • ミネラルウォーターや家庭用水機器 など

このなかで特に市場の成長率が高いのが上水・下水道関連などのインフラ系。

インフラ系は「部材・機器の製造」「装置やプラントの建設」「事業運営」にわかれます。このうち、日本企業で事業運営に関わってくるのが三菱商事や伊藤忠などの商社、部材製造は東レや東洋紡などの素材メーカーです。

具体的な銘柄をあげてみます。

銘柄名特徴
東洋紡(3101)海水淡水化装置のモジュール開発
東レ(3402)RO膜製造やプラント設計に強み
水道機工(3403)上水道向けの浄水設備。東レの子会社
ササクラ(6303)海水淡水化装置メーカー。小型・大型・船舶用など幅広い
三浦工業(6005)バラスト水処理装置の製造・販売
野村マイクロサイエンス(6254)半導体製造用の超純水製造装置を生産
クボタ(6326)プラント建設
荏原実業(6328)水道・汚水処理施設の設計施工
荏原(6361)海水淡水化プラントのポンプを製造
酉島製作所(6363)海水淡水化プラントのポンプを製造
電業社機械製作所(6365)海水淡水化プラントのポンプを製造
オルガノ(6368)超純水製造や機能水製造システム
栗田工業(6370)水処理薬品や半導体製造用の超純水供給事業
日東電工(6988)RO膜の製造やシステム設計
日立造船(7004)プラント建設
メタウォーター(9551)上下水道処理設備の工事

上記はあくまで一例です。この他にも水ビジネス銘柄は多々あります。

とはいえ多すぎてもよくわかりませんので、特に注目の水ビジネス銘柄を紹介します。

メタウォーター(9551)

東証1部。日本ガイシと富士電機の水環境事業を統合して発足したエンジニアリング企業です。

  • 株価:2,095円(2021年7月5日時点)
  • 予想配当利回り:1.94%
  • 配当権利月:3月、9月

水処理専業で、上下水処理設備工事の国内大手。水処理設備の設計から技術導入、運転までトータルで提案できる強みがあります。

国内の水ビジネス銘柄の代表格といえるでしょう。

オルガノ(6368)

東証1部。東ソー系の企業。半導体向けの超純水製造装置に強みがあるエンジニアリング企業です。

  • 株価:6,160円(2021年7月5日時点)
  • 予想配当利回り:1.87%
  • 配当権利月:3月、9月

台湾や中国などアジアの半導体企業へ展開中。

半導体関連銘柄でもあり、そちらの話題にも反応します。出来高が少ないので値動きはやや荒めです。

荏原実業(6328)

東証1部。上下水道設備や汚水処理施設などの環境関連施設の設計施工、荏原製作所などのポンプメーカーの代理店事業などを手掛ける会社です。

  • 株価:3,005円(2021年7月5日時点)
  • 予想配当利回り:2.53%
  • 配当権利月:6月、12月

地味ですが業績は堅調。特に2020年からはコロナ禍での陰圧装置特需により株価が大きく伸びています。

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水ビジネスに投資できる投資信託・海外ETF

水ビジネスの国内銘柄を紹介しましたが、水ビジネスのメインは海外企業です。

経済産業省の資料によると日本企業の水ビジネス売上高は国内外あわせて2兆円ほど(参考:経済産業省「⽔ビジネス海外展開施策の10年の振り返りと今後の展開の⽅向性に関する調査」より)。110兆円の巨大市場のなかでは、ちょっと寂しい数字ですよね。

日本企業は部材や装置などの分野では強いものの、その他の事業分野では存在感がありません。

世界の水ビジネスのトッププレイヤーに名を連ねるのは、水メジャーと呼ばれるフランスのヴェオリアやスエズ(ヴェオリアと合併予定)、中国の中国能源建設、アメリカのザイレムなど。特に欧州や北米企業が目立ちます。

よって水ビジネスに投資するなら、海外の企業にも目を向ける必要がありそうです。

とはいえ海外の個別銘柄はややハードルが高め。そこで、全世界の水ビジネスに投資できる投資信託と海外ETFを探してみました。

水ビジネス対象の投資信託

国内の投資信託は、2021年7月時点で調べた限りでは2つ見つかりました。

ファンド名信託報酬取扱特徴
三菱UFJグローバル・エコ・ウォーター・ファンド1.8%程度
(信託財産留保0.3%)
SBI証券
楽天証券など
日本を含む世界の水関連企業の株式に投資する
ワールド・ウォーター・ファンド Aコース1.87%程度
(購入時手数料3.3%、信託財産留保0.3%)
野村證券為替ヘッジあり。日本を含む世界の水関連企業と空気関連企業の株式に投資する
ワールド・ウォーター・ファンド Bコース為替ヘッジなし。その他は同上。

どちらも国内外の水関連企業に投資できますが、下記のデメリットがあります。

  • 信託報酬が高すぎる
  • 純資産総額が100億以下のため安定性に不安がある

三菱UFJグローバル・エコ・ウォーター・ファンドの方が買いやすさと手数料の面では軍配が上がりますが、正直どちらの投資信託もおすすめが難しいですね…。

右肩上がりではあるため、サテライトとして少額投資するなら良いかもしれません。

水ビジネス対象の海外ETF

投資信託がイマイチだったので、海外ETFも探してみました。候補に上がったのが下記4つです。

  • PHO
  • PIO
  • CGW
  • FIW

このうち、2021年7月時点で日本の証券会社から投資できるのはPIO(INVESCO GLOBAL WATER ETF)のみでした。

  • ティッカー:PIO
  • 取扱市場:NASDAQ
  • 手数料:0.75 %
  • 分配金利回り:0.71%
  • 特徴:ナスダックOMXグローバル・ウォーター・インデックスの価格と利回りに連動する投資成果を追求する

組入銘柄はダナハー、エコラボ、ファーガソンなど。日本のTOTO、栗田、三浦なども入っていますね。

国別比率を55%以上が米国企業、次いでイギリス、スイス、日本、フランスと続きます。

ETFとしてはやや手数料が高めですが、国内の投資信託よりおすすめできます。

ドルでの投資に抵抗がない方はPIOを買ってもしまうのが良いかもしれません!

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まとめ

水不足は世界的な問題であり、水資源の持続的な開発はSDGsテーマの1つでもあります。

水ビジネスの市場は今後も拡大する可能性が非常に高い分野。

  • 装置や部材に強いニッチな日本銘柄に投資
  • PIOで全世界の水ビジネス関連企業に幅広く投資

どちらの戦略を取るにしても、水ビジネス関連は今後も注目していきたいですね。

日経ヴェリタス 2021年9月26日号 水ビジネス、世界で潤す 110兆円市場、「渇き」に挑む日本の技術 雑誌

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