市場調査会社REPORTOCEANによると、世界のサイバーセキュリティ市場は2020年から毎年11.8%成長し、2030年までに5,345億ドルに達するとのこと。
この成長市場に関連する株は「サイバーセキュリティ関連銘柄」と呼ばれ、以前から人気のテーマです。しかし人気ゆえに「サイバーセキュリティ関連銘柄ってどんどん増えるよね」「結局どれが本命なの?」と迷われる方も多いでしょう。
そこで今回は、サイバーセキュリティ関連銘柄の一覧と、とくに注目できる銘柄を紹介します。海外のサイバーセキュリティ関連株に投資できる米国ETFも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
サイバーセキュリティ関連株とは?
サイバーセキュリティ関連株とは「サイバー攻撃を防ぐための製品・サービスなどを手掛ける銘柄」の総称です。
以前より人気のテーマではありますが、5GやIoT、SaaS型サービス、自動運転などテクノロジーの発展に伴ってそのカバー範囲はどんどん広がり続けています。
市場規模の拡大は疑いようがなく、今後も注目すべき分野といえるでしょう。
サイバーセキュリティ関連株の銘柄一覧
さっそくサイバーセキュリティ関連株をまとめます。
証券コード | 銘柄名 | 特徴 |
2326 | デジタルアーツ | ネットセキュリティ専業。フィルタソフト『i-フィルター』など |
2467 | バルクホールディングス | 情報セキュリティコンサルと市場調査 |
3040 | ソリトンシステムズ | 官公庁・大企業向けのセキュリティ対策ソフト |
3042 | セキュアヴェイル | 情報セキュリティ構築やログ分析サービスに特化 |
3356 | テリロジー | 情報セキュリティを含むネット製品輸入販売 |
3676 | デジタルハーツホールディングス | ゲーム関連のデバッグが主力。セキュリティや保守運用分野が高需要 |
3682 | エンカレッジ・テクノロジ | システム証跡管理ソフトと保守サービス |
3692 | FFRI | 独立系のサイバーセキュリティ会社。『FFRI yarai』など |
3837 | アドソル日進 | 大企業向けのシステム構築に強み IoT機器を守る『LynxSECURE』など プリペイドカードの優待あり |
3788 | GMOグローバルサイン・ホールディングス | GMO傘下でクラウド・セキュリティ事業を展開 電子認証・電子印鑑からレンタルサーバ、IoTなどなど キャッシュバックなどの優待あり |
3857 | ラック | KDDIと資本提携したセキュリティSI企業 コンサル〜運用、教育、開発の他にセキュリティ保険と幅広い商品ラインナップ |
3916 | DIT | 金融・通信業界に強いソフトウェア開発会社 |
3962 | チェンジ | 地方自治体・企業のDX支援 侵入されても発症しない次世代セキュリティ『AppGuard』など 商品交換可能なポイントがもらえる優待あり |
4288 | アズジェント | セキュリティソフト輸入販売、構築、運用など |
4307 | 野村総合研究所(NRI) | 金融関係に強いSI企業 |
4475 | HENNGE | クラウドID管理サービス『HENNGE ONE』など |
4687 | TDCソフト | 金融関連ソフト開発に強み。セキュリティなどの高付加価値サービスに需要あり |
4704 | トレンドマイクロ | セキュリティソフト【ウイルスバスタークラウド】 で国内首位 |
4493 | サイバーセキュリティクラウド | セキュリティソフト『攻撃遮断くん』が主力 |
6050 | イー・ガーディアン | 投稿監視などを手掛ける総合ネットセキュリティ企業 |
6741 | 日本信号 | 鉄道・信号など交通系インフラを手掛ける |
7518 | ネットワンシステムズ | Cisco製品の取り扱い比率約5割 |
9692 | シーイーシー(CEC) | 官公庁向けの情報セキュリティなどに強いSI企業 |
9889 | JBCCホールディングス | ITサービス大手。セキュリティなどの高付加価値事業推進 |
サイバーセキュリティ関連株の本命候補
上で紹介したとおりサイバーセキュリティのテーマに入る銘柄は多数ありますが、玉石混交です。
正直「いつまでも新興市場から昇格しないし、株価も冴えないなぁ」という銘柄も少なくありません。
そこでここからは、長期チャートが横ばい〜上向きで、かつ今後も有望そうな本命銘柄に絞って紹介します。
※情報は2021年10月時点のものです。
デジタルアーツ(2326)
- 市場:東証1部(情報通信)
- 株価:8,920円
- PER/PBR:49.26倍/12.5倍
- 予想配当利回り:0.73%(3月、9月)
ネットセキュリティ専業。フィルタソフト「i-フィルター」などを展開しています。官公庁や学校、大企業への導入実績が豊富。売上高を順調に伸ばしており、また昨今の在宅ワークの促進も追い風となって好調です。
株価は買いにくいですが、今後も成長が期待できる企業です。
ソリトンシステムズ(3040)
- 市場(業種):東証1部(情報通信)
- 株価:1,431円
- PER/PBR:17.67倍/3.46倍
- 予想配当利回り:0.98%(3月、9月)
遠隔運転システムなども手掛けてはいますが、主力はクラウド型のセキュリティ対策ソフト。官公庁や教育機関、大企業へも導入実績も多数あります。
売上高は横ばいですが、テレワーク向けの新サービスなどがうまくいけば面白いかも知れません。
アドソル日進(3837)
- 市場(業種):東証1部(情報通信)
- 株価:2,145円
- PER/PBR:21.89倍/3.81倍
- 予想配当利回り:1.68%(3月、9月)、プリペイドカードなどの株主優待あり
大企業向けの大規模システム、とくに社会インフラに強みがあります。アドソル日進も官公庁や大企業と提携しており、技術力には安心感がありますね。
売上高はゆるやかに右肩上がり。株価もおおむね右肩上がりなので、安いときに買いたい銘柄です。
野村総合研究所 (4307)
- 市場(業種):東証1部(情報通信)
- 株価:3,980円
- PER/PBR:34.94倍/7.27倍
- 予想配当利回り:0.95%(3月、9月)
名前の通り、野村證券系のシステムインテグレーション企業。金融機関向けITが主力ですが、物流向けも好調。今後も順調な成長が期待できます。
売上高、営業利益、経常利益がきれいな右肩上がり。株価ももちろん右肩上がりです。
イー・ガーディアン(6050)
- 市場(業種):東証1部(サービス)
- 株価:3,060円
- PER/PBR:27.92倍/6.57倍
- 予想配当利回り:0.46%(9月)
サイバーセキュリティのほか、投稿監視やカスタマーサポートなどネット周りのことをすべて扱う総合ネットセキュリティ企業。SNSや動画投稿の発展によって投稿監視業務が順調で、広告審査やソーシャルゲーム支援、キャッシュレス関連など幅広く展開しています。
メディア関係のネットセキュリティの興味があるならこの銘柄でしょう。
DIT(3916)
- 市場(業種):東証1部(情報通信)
- 株価:1,693円
- PER/PBR:19.55倍/5.7倍
- 予想配当利回り:1.77%(6月、12月)
正式名称はデジタル・インフォメーション・テクノロジーで、独立系情報サービスの会社です。主力のソフトウェア開発では金融と通信業界に強みがあります。
売上高、営業利益、純利益ともにしっかり右肩上がりです。毎年増配しているのもポイントが高いですね。
トレンドマイクロ(4704)
- 市場(業種):東証1部(情報通信)
- 株価:6,140円
- PER/PBR:29.62倍/4.45倍
- 予想配当利回り:2.5%(12月)
主力の情報セキュリティソフト【ウイルスバスタークラウド】 が個人・法人用で国内シェアトップ。世界でも3位です。
ここ10年近くは売上高が右肩上がり。セキュリティソフトといえばウイルスバスターのイメージが国内では強いため、安定感がありますね。
日本信号(6741)
- 市場(業種):東証1部(電気機器)
- 株価:950円
- PER/PBR:11.85倍/0.7倍
- 予想配当利回り:2.84%(3月、9月)
鉄道や道路信号などを手掛ける信号会社のトップ。JRや私鉄、海外の鉄道などで安全関連のシステム更新需要があり、好調とのこと。
ど真ん中のサイバーセキュリティではありませんが、交通系インフラのデジタル化にともなうセキュリティ強化やテロ対策機器などに関わっています。
サイバーセキュリティクラウド(4493)
- 市場(業種):マザーズ(情報通信)
- 株価:2,665円
- PER/PBR:113.4倍/27.84倍
- 予想配当利回り:なし
2020年3月に上場したばかりの新興銘柄です。WEBセキュリティサービス『攻撃遮断くん』が主力。株価は期待が先行しており、またスタートアップ企業らしく上場直後にお祭り騒ぎになってしまったため、現在は底練り期間となっています。
しばらく上がるのは難しそうですが、新しいサイバーセキュリティ関連銘柄としてウォッチしておくと、テーマに注目が集まったときに面白いかもしれません。
サイバーセキュリティ関連株の米国ETFも紹介
国内の銘柄を紹介してきましたが、世界規模でみたとき、サイバーセキュリティのキープレイヤーの多くは海外企業です。
サイバーセキュリティ市場のシェア上位企業(2020年)を見ると、1位シスコ システムズ(CSCO)、2位パロ アルト ネットワークス(PANW)、3位マイクロソフト(MSFT)となっています。
15位までのうち、国内銘柄は9位にトレンドマイクロ(4704)が入っているのみ。他は未上場のAvast Software (アバストソフトウェア)やSophos(ソフォス)にも負けています。(参考:SBI証券 特集レポート「ホワイトハウスも重視するサイバーセキュリティ!!注目銘柄を人気のETFからご紹介!」より)
しかし、海外の個別銘柄に投資するのはハードルが高い…ということで、サイバーセキュリティ銘柄に分散投資できる米国ETFを紹介します。
(なお以下の情報は2021年10月時点のものです)
グローバルX サイバーセキュリティETF(BUG)
- 名称:グローバルX サイバーセキュリティETF
- ティッカー:BUG
- 取扱市場:NASDAQ
- 経費率:0.5%
- 分配金利回り:0.04%
- 連動指数:Indxx Cybersecurity Index
2019年設立の、サイバーセキュリティ・テクノロジーの需要拡大によって利益を得る可能性がある企業への投資を目指すETF。株価30ドル前後と買いやすい価格帯です。
【構成銘柄トップ5】
- Zスケーラー(ZS)/7.81%
- フォーティネット(FTNT)/7.17%
- クラウド ストライクHD A(CRWD)/7.06%
- パロ アルト ネットワークス(PANW)/6.42%
- オクタ(OKTA) /5.28%
(出典:SBI証券「BUG」より)
FT NASDAQ サイバーセキュリティETF(CIBR)
- 名称:FT NASDAQ サイバーセキュリティETF
- ティッカー:CIBR
- 取扱市場:NASDAQ
- 経費率:0.60%
- 分配金利回り:0.12%
- 連動指数:Nasdaq CEA Cybersecurity Index
設立日は2015年、価格は50ドル前後です。上述したBUGと似ていますが、設立日が早い分だけCIBRの方が純資産額は大きくなっています。
経費率はBUGが安いですが、CIBRの方が利回りが大きいので、この辺は好みの問題でしょう。
【構成銘柄トップ5】
- Zスケーラー(ZS)/6.76%
- クラウド ストライクHD A(CRWD)/6.36%
- アクセンチュア A(ACN)/6.27%
- オクタ A(OKTA)/6.20%
- シスコ システムズ(CSCO)/5.83%
(出典:SBI証券「CIBR」より)
ETFMGプライムサイバーセキュリティ(HACK)
- 名称:ETFMGプライムサイバーセキュリティETF
- ティッカー:HAK
- 取扱市場:NASDAQ
- 経費率:0.60%
- 分配金利回り:0.29%
- 連動指数:ー
2014年設立。ISE Cyber Security Indexの価格と利回り実績におおむね連動する投資成果を目指す、としているETF。純資産額を見るに、人気はCIBRより低そうです。
ちなみに構成銘柄トップのVALTは米国の超短期債が投資対象です。割合は低いですが少し債券(ほぼ現金)が混ざっているので、他2つとは毛色が違う点に留意してください。
【構成銘柄トップ5】
- ETFMG SIT ULTRA SHORT ETF(VALT) 3.56%
- シスコ システムズ(CSCO) 3.24%
- クラウドフレア A(NET) 3.13%
- フォーティネット(FTNT) 3.08%
- ダークトレース(DARK) 3.07%
(出典:SBI証券「HACK」より)
まとめ
サイバーセキュリティ市場は、ほぼ約束された成長市場といえます。
しかし関連株の数が多く、また少しでもサイバーセキュリティに関係していれば何でも関連株になってしまっている面もあります。本当に業界で実績を残せているのか慎重に見極める必要があるでしょう。
サイバー攻撃の高度化・多様化により、エンドポイント(パソコン単体)の防御だけでの対策は無意味となりつつあります。各種ハードウェア(Iot機器含む)、ネットワーク、データ暗号化、監視検知など包括的な対策が重要です。
Sophos(ソフォス)のような買収により成長している多角的なセキュリティ会社がシェアを伸ばしているように、広い視野で柔軟な事業戦略を取れる企業が「本命株」になるのかもしれません。
また世界市場をみると、キープレイヤーの多くは海外の企業。よって、米国ETFでサイバーセキュリティ市場に分散投資してしまうのもおすすめです!
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