再生可能エネルギーのうち、地熱発電は天候に左右されない安定したエネルギー資源です。
火山大国である日本は、世界第3位の地熱資源を持つ国。2021年6月には、行政改革担当大臣だった河野太郎氏が2030年に地熱発電施設を倍増する目標を掲げて話題となりました。
今回は、脱炭素の流れで盛り上がる可能性が高い地熱発電の関連銘柄を紹介します。
地熱発電とは?
地熱発電とは、地下1,500〜3,000mほどの深さにある「地熱貯留層」から高温高圧の熱水・蒸気を取り出し、その力を利用してタービンを回転させる発電方法です。
利用し終わった蒸気は再び地熱貯留層へ戻すため、地熱貯留層を枯渇させることなく、安定した発電が可能です。
完成すればメリットの大きい発電方法である一方、地下深くにある地熱貯留層を掘り当てる必要があるため、調査段階からコストと時間がかかります。
2017年の古い記事ですが、資源エネルギー庁によると、調査で2,000m掘るのに4億円ほどかかるとのこと。そこまでかけても、十分な発電量が得られるとは限りません。
初期ハードルの高さが地熱発電の大きな課題といえるでしょう。
(参考:経済産業省資源エネルギー庁「知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~地方創生にも役立つ再エネ「地熱発電」」)
地熱発電を取り巻く状況
地熱発電について、日本と世界の状況を紹介します。
日本の地熱発電
国土に多くの火山を有する日本の地熱資源量は2,300万kW。アメリカ、インドネシアに次いで3位の資源量です。
しかしながら、全国の地熱発電の発電設備容量を合計すると約54万kWであり、資源のポテンシャルが十分にいかされていない状況です。2030年のエネルギーミックス目標では、地熱発電の目標値は140万〜155万kW。現状で100万kWも足りていません。
初期投資が莫大という以外にも、日本の地熱発電には上記のような根深い課題があります。
クリーンで燃料費が不要なことから、地熱発電は資源の乏しい日本に最適な発電方法ではあるものの、発電設備を増やすためには技術の研鑽と国の後押しが必要。
世界的な脱炭素の流れの中で、国が地熱発電をどれほど強力に推し進めるのかがポイントになるでしょう。
(参考:日本地熱協会「地熱発電の現況と課題」)
世界の地熱発電
世界に目を向けると、環太平洋火山帯の国々の多くは地熱発電に積極的です。
豊富な地熱資源量を持つアメリカが、発電設備容量でも280万kWで1位。次いで2位インドネシア200万kW、3位フィリピン190万kWと続きます(2018年時点)。
一方で資源量では3位の日本は、発電設備容量では10位にまで落ちてしまいます。
とはいえ、日本企業に商機がないわけではありません。
地熱発電に必須のタービンは富士電機、東芝、三菱重工の日本企業3社で世界シェア6割を占めるなど、海外で活躍している企業も多くあります。
日本の地熱発電の将来は不明な点もありますが、海外の地熱発電の伸びで日本の銘柄にも恩恵が期待できるといえるでしょう。
(参考:地熱資源情報「世界の地熱発電」)
(参考:2021年6月11日の日経経済新聞)
地熱発電関連銘柄の一覧
証券コード | 銘柄名 | 内容 |
1515 | 日鉄鉱業 | 大霧発電所に蒸気供給 |
1605 | INPEX | 子会社が掘削サービスを展開 |
1663 | K&Oエナジーグループ | 地熱発電に向けた調査事業を開始 |
2395 | 新日本科学 | 子会社が地熱発電事業を開始 |
5411 | JFEホールディングス | 子会社が地熱発電システムを手掛ける |
6297 | 鉱研工業 | ボーリング機器大手 |
6365 | 電業社機械製作所 | 地熱発電用ポンプ |
6502 | 東芝 | 地熱発電設備 |
6540 | 富士電機 | 地熱発電用タービン |
6841 | 横河電機 | 地熱発電向け制御システム |
7011 | 三菱重工 | 地熱発電設備 |
7162 | アストマックス | 地熱発電を含む再生可能エネルギー事業を展開 |
8059 | 第一実業 | 小規模地熱発電向け小型バイナリー発電システム |
9513 | J-POWER(電源開発) | 地熱発電事業の運転と開発 |
9519 | レノバ | 地熱発電を含む再生可能エネルギー事業を展開 |
9624 | 長大 | 地熱発電促進サポート |
ここからは、上記のなかで特に注目できる銘柄を紹介します。なお情報はIRBankおよびSBI証券のサイトから取得しました。(2021年11月時点)
鉱研工業(6297)
- 市場:JASDAQ(機械)
- 配当利回り:1.91%(3月配当)
- PER/PBR:10.07倍/0.79倍
ボーリングマシンの大手。温泉開発工事なども手掛けています。
鉱研工業は2018年にNEDO事業で地熱発電用新型掘削機を開発しているため、連想買いされやすい関連銘柄の1つといえるでしょう。また時価総額37.58億と軽く、物色されると上がりやすい傾向にあります。
電業社機械製作所(6365)
- 市場:東証2部(機械)
- 配当利回り:3.37%(3月・9月配当)
- PER/PBR:7.39倍/0.71倍
ポンプ大手の1つで、地熱発電用ポンプを手掛けています。地熱発電プラントで使用する熱水還元ポンプや温水ポンプ、冷却水ポンプを展開。海外プラントに導入された実績もあります。
ただし、東証2部というマイナー市場ゆえに非常に出来高が少ないのがネックです。値が飛びやすい点に注意して売買してください。
富士電機(6540)
- 市場:東証1部(電気機器)
- 配当利回り:1.43%(3月・9月配当)
- PER/PBR:16.97倍/1.97倍
地熱発電用タービンで世界トップクラスの受注実績があります。企業の報告では2000年以降世界シェアトップとのこと。また海外向けだけでなく、国内のプラント全体を納入した実績もあります。
地熱発電銘柄の代表格といえるでしょう。
J-POWER(電源開発)(9513)
- 市場:東証1部(電気・ガス業)
- 配当利回り:5.19%(3月・9月配当)
- PER/PBR:8.82倍/0.31倍
地熱発電事業で運転実績と新規開発の実績が多数あります。
最近では、2019年に三菱マテリアルと三菱ガス化学と一緒に地熱発電会社を設立し、秋田県の大規模地熱発電所・山葵沢地熱発電所の運転を開始しました。
レノバ(9519)
- 市場:東証1部(電気・ガス業)
- 配当利回り:0%
- PER/PBR:81.93倍/14.25倍
再生可能エネルギーの発電・運営開発を手掛ける会社。各地で積極的に地熱発電のプロジェクトを進めているほか、太陽光やバイオマス、風力など多様な発電方法で事業を展開しています。
地熱発電だけでなく”再生可能エネルギー銘柄”として人気です。
まとめ
国産の安定した自然エネルギーとして注目される地熱発電の関連銘柄を紹介しました。
日本は豊富な地熱資源に恵まれていながら、十分に活用できていないのが現状です。クリーンエネルギーとして国が強く推奨する流れになるなら面白いテーマではないでしょうか。
なお地熱発電は海外でも積極的に進められています。地熱発電の関連企業はクリーンエネルギー系ETFに含まれていますので、ぜひ探してみてください。
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