人気テーマの「全固体電池」をわかりやすく解説!注目銘柄も紹介

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株式投資における近年の人気テーマ”全固体電池”。しかし、関連銘柄がたくさんあり、結局どれが本命なのかわかりにくいテーマでもあります。

また話題は知っていても、技術まで詳しく知らない人も多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、以下のことを解説します。

  • そもそも全固体電池とは?なにがすごいの?
  • 注目銘柄は?
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全固体電池とは?

全固体電池とは、電池に使われる「電解質」に固体材料を使った電池の総称です。

電池は次の3つの材料で構成されています。

  • プラス極(正極)
  • マイナス極(負極)
  • 電解質

電解質は、正極と負極の間で電子を媒介する役割を持つ材料のことです。

化学の授業で、グレープフルーツに電極を2本挿して豆電球を点ける実験をしたことはありませんか?あの実験におけるグレープフルーツ(正確には果汁)が電解質にあたります。

全固体電池のココがすごい!

「電解質が固体なだけでなにがすごいの?」と思われるかもしれませんが、実用レベルの固体電解質材料が発明できたのはつい最近のこと。近年まで電解質=液体が当たり前でした。

実際、私たちが普段よく使っているアルカリ乾電池も、スマートフォンなどに使われているリチウムイオン電池も、電解質は液体です。

電解質が液体から固体になるメリットは大きく2つあります。

  • 液漏れ対策が要らない
  • セパレーターフィルムが要らない

液漏れ対策が要らない

液体の電解質の多くは危険物です。例えばリチウムイオン電池の場合、発火や爆発の危険性がある有機溶剤が使われています。

よって液漏れは厳禁。電池には丈夫な筐体が必要になり、電池の軽量化や小型化の妨げになっていました。

全固体電池になれば、万が一破損しても液漏れの心配がないため、設計の自由度が上がります。

セパレーターフィルムが不要

通常の電池には、正極と負極が接触してショートしないようにセパレーターフィルムという接触防止の”壁”が挟まっています。

しかし、電池が衝撃をうけてフィルムが破損したり、元から性能の低いフィルムが使われていたりすると”壁”の役割が果たせず、事故につながります。

一時期、リチウムイオン電池のトラブルが話題になりましたよね。

  • かばんに入れていたモバイルバッテリーが急に爆発して火傷した
  • 充電中のスマートフォンが異常に熱くなり、放り出した途端に火柱が立った

電解質が固体になれば、電解質自体が壁になるためセパレーターフィルムが不要になります。

安全性の面でも、電池設計の自由度の面でも、電解質が固体になるメリットは大きいのです。

全固体電池の種類は主に2つ

「全固体電池」と一口にいっても、電解質の材質によって種類は複数に分かれます。

得に実用化の本命といわれているのが、次の2種類です。

  • 硫化物系
  • 酸化物系

それぞれ特徴を解説します。

硫化物系の全固体電池

車載用電池の本命とされ、トヨタなどの自動車メーカーが開発に力を入れているのが硫化物系です。

固体でありながらゴムのような質感を持つため、電極と密着させやすく、高い伝導率を持つのが特徴。

まだ開発段階であり、2021年5月現在、実用化はされていません。

しかし近々トヨタが全固体電池を使った試作車を発表するのではと噂されています(参考:週間エコノミストOnlineより)。

酸化物系の全固体電池

電解質にセラミックを使った全固体電池が酸化物系に入ります。

セラミックのため耐熱性が高く、硫化物系よりも化学的に安定しているのが特徴です。安全性が高いとも言い換えられますね。

スマートフォンのような人体の近くで使う機器では、より安全性の高い酸化物系の全固体電池が本命であり、すでに村田製作所やTDKが2020年より生産を開始しています(参考:ニュースイッチより)。

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全固体電池の注目銘柄は?

全固体電池の関連銘柄を調べると、たくさんの銘柄名が上がります。トヨタや日産、ホンダなどのNEDOプロジェクト参画企業から、IR情報にて全固体電池との関連がうかがえるだけの企業までさまざまです。

そのなかで「製品開発」「電解質の材料開発」「海外企業」の3つの視点で注目できる銘柄を紹介します。

村田製作所(6981)

電子部品メーカー大手の村田製作所(6981)は、酸化物系固体電池の本命銘柄の1つ。またNEDOプロジェクト参画企業でもあります。

村田製作所は集積セラミックコンデンサの積層技術に強みがあり、その技術力を全固体電池にも応用。2020年よりウエアラブル端末やスマートフォン向けの市場開拓を狙って生産を開始しました。

今後は集積回路と全固体電池を一体化した商品の提供を目指すと発表しています。(参考:ニュースイッチより)。

  • 市場:東証1部
  • 売上高:直近10年は右肩上がり
  • 純利益:横ばいからの右肩上がり
  • 自己資本比率:78%
  • 配当利回り:1.37%
  • 権利確定月(支払い月):3月/9月(6月/11月)
  • PER/PBR:23.28倍/2.91倍

(参考:IRBank「6981 村田製作所」、Yahoo!ファイナンスより、2021年5月10日時点)

安定成長中ですね。時価総額が大きいため、ザ・テーマ株のような値動きが苦手な人でも買いやすいかもしれません。

ただ、株価としてはやや高めでしょうか。今後の動向は要チェックです。

三井金属鉱業(5706)

全固体電池では電解質の材料開発も重要であり、国内企業では三井金属(5706)と出光興産(5019)が先行しています。

特に三井金属は、2021年中に電池の試作向け材料供給体制を整えるとのこと(参考:エコノミストより)。

三井金属もNEDO参画企業であり、電池メーカーや自動車メーカーと材料の実用化に向けて協業しています。

  • 市場:東証1部
  • 売上高:直近10年は横ばい
  • 純利益:凹凸の目立つ横ばい
  • 自己資本比率:30.7%
  • 配当利回り:1.96%
  • 権利確定月(支払月):3月(6月)
  • PER/PBR:5.82倍/1.31倍

(参考:IRBank「5706 三井金属鉱業」、Yahoo!ファイナンスより、2021年5月10日時点)

明治の鉱山経営からスタートした超老舗企業です。

材料屋のため全固体電池の他にEVやIoTなど幅広いテーマに絡んでおり、今後の成長市場の波に乗れるポテンシャルがあります。

三桜工業(6584)

三櫻工業(登記簿名)とも記載される自動車部品メーカーで、ブレーキチューブなどのチューブ製品、シートベルト用部品などが主力製品です。

一見すると全固体電池には無関係に見えますが、全固体電池を開発している米国のベンチャー企業Solid Power(ソリッドパワー)に出資しているため、関連銘柄に入ります。

  • 市場:東証1部
  • 売上高:波あり
  • 純利益:凹凸の目立つ横ばい
  • 自己資本比率:32%
  • 配当利回り:2.35%
  • 権利確定月(支払月):3月/9月(6月/12月)
  • PER/PBR:16.41倍/1.48倍

(参考:IRBank「6584 三櫻工業」、Yahoo!ファイナンスより、2021年5月10日時点)

有利子負債比率が高いのが気になりますが、直近のチャートは上昇基調。売上回復や固定費削減などで全体的に業績の調子が戻ってきているようです。

ソリッドパワーの全固体電池は重量エネルギー密度が330Wh/kgと数値上は優秀にみえます(一般のリチウムイオン電池は250Wh/kg)。しかし、急速な充電と放電には課題があるなど、実用化にはまだ高い壁がありそうです(参考:日経XTechより)。

とはいえソリッドパワーにはアメリカの自動車大手フォードも出資しており、話題性は十分ですね。

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まとめ

全固体電池は、電池内部の電解質に固体材料を使った次世代型電池です。

  • リチウムイオン電池より安全性が高い
  • 設計の自由度が高い

電池の軽量化にもつながるため、実用化を期待したい革新的な技術といえます。

全固体電池は硫化物系と酸化物系に大別され、下記のような違いがあります。

  • 硫化物系:車載用途の本命。トヨタなどの自動車メーカーが力を入れている。
  • 酸化物系:スマートフォンなどのデバイス向け。村田製作所など電子部品メーカーが生産開始。

実用化はまだ少し先になりそうですが、今後も注目していきたいテーマです。

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