自然災害の多い日本では、南海トラフ地震や首都直下型地震といった地震のリスクが常にあります。ひとたび大きな地震が発生すれば、人々の生活だけでなく、株式市場にも大きな影響が……。
そこで今回は、地震に備えてチェックしておきたい復興・災害対策関連銘柄を紹介します。
地震後に上がる復興・災害関連銘柄とは?
地震後に注目が集まる復興関連銘柄および災害関連銘柄とは、災害からの復旧工事や防災意識の高まりなどで需要が増える業界の銘柄を指します。
- 建設・土木関係
- 保存食・防災グッズ、防災機器関係
- 地盤調査や測量関係
- 防災・生活用品を販売するホームセンターなど
具体的には上記のような業界の会社が関連銘柄になります。
一方で、直接的な被害を受けやすい鉄道やガス・電力といったインフラ系、損害保険金を支払う保険会社、被災地に拠点のある会社の銘柄は下がりやすいといえるでしょう。
地震災害発生後の株価の傾向
震災で復興・災害関連銘柄が上がる傾向にあるのは確かですが、地震発生ですぐに買いが入るわけではありません。
後ほど紹介する不動テトラ(1813)のように投機的な動きで高騰する銘柄はわずかで、多くの銘柄は一旦下がると考えたほうがよいでしょう。地震の規模にもよりますが、東日本大震災レベルの甚大な被害となれば市場全体が暴落します。東日本大震災では、当時10,254円だった日経平均株価は一時期14.48%まで下落しました(参考:時事ドットコムニュース)。
そもそも被害の全容がすぐに見えない規模の災害となれば、経済活動よりも命が優先されますので、ある意味「下がるのは当たり前」ともいえます。
一方で「大きめの地震ではあったが、ほとんど被害がない」といったケースでは、直後に少し投機的な動きがあるものの、基本的には無風で終わるケースが多いようです。
一時的に円高傾向になる
為替に関しては、大規模な災害が発生すると一時的に円高に傾きやすくなります。
というのも、復旧や補償などで円の需要が平時よりも高まり、海外資産を売却して円に戻す動きが強まるためです。
日本および関係各国で通貨の対策が取られれば円安へ戻りますが、短期的には激しい値動きになると見たほうがよいでしょう。
地震で注目が集まる災害対策・復興関連銘柄一覧
地震発生で注目が集まりやすい災害対策・復興関連銘柄について「市況が悪化しても株価が踏みとどまりやすい」「震災後に上がりやすい」銘柄を中心に紹介します。
証券コード |
銘柄名 |
内容 |
1801 | 大成建設 | 高強度コンクリート |
1813 | 不動テトラ | 海上土木・地盤改良 |
1833 | 奥村組 | 耐震工事 |
1893 | 五洋建設 | 海上土木 |
4825 | ウェザーニューズ | 地震速報・気象予報 |
5108 | ブリヂストン | 建築用の免震ゴム |
6744 | 能美防災 | 防災機器メーカー |
6745 | ホーチキ | 火災報知器 |
7518 | コーナン | ホームセンター |
9232 | パスコ | 航空測量 |
9233 | アジア航測 | 航空測量 |
ここからは、上記のなかで特に注目できる銘柄を紹介します。なお情報はIRBankおよびSBI証券のサイトから取得しました。(2021年11月時点)
ウェザーニューズ(4825)
- 市場:東証1部(情報・通信業)
- 配当利回り:1.14%(5月・11月配当)
- PER/PBR:51.01倍/6.3倍
民間気象情報の世界大手です。
地震発生直後は、震度や震源地に関する情報、その後の気象情報の需要が高まります。ウェザーニューズは個人向け・企業向けに幅広く気象情報を提供しており、震災以外の災害でも名前の上がる王道の災害対策銘柄といえるでしょう。
東日本大震災でも、一時的に株価を下げたものも、すぐに回復しています。長期的に見ても右肩上がりの優等生銘柄です。
ウェザーニューズについては個別に紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。
関連記事:「ウェザーニューズ(4825)銘柄分析!台風シーズンで注目される世界最大級の気象情報会社」
不動テトラ(1813)
- 市場:東証1部(建設業)
- 配当利回り:3.28%(3月配当)
- PER/PBR:11.73倍/0.97倍
不動テトラは海上土木や地盤改良を手掛ける会社です。
地震発生で買いが集まる銘柄として有名。実際、東日本大震災があった2011年3月は株価が月初の5倍近くまで一時的に高騰しました。思惑買いが集まりやすい短期向け銘柄といえるでしょう。
とはいえ長期チャートは冴えません。下手に飛びつくと高値掴みで火傷しますので、あくまでトレード対象と割り切ってウォッチしてみてください。
五洋建設(1893)
- 市場:東証1部(建設業)
- 配当利回り:2.85%(3月配当)
- PER/PBR:10.79倍/1.45倍
海上土木トップの準大手ゼネコンです。
津波で被害を受けた港湾・海岸施設の復旧工事で実績があります。また物流施設や脱炭素関連事業も手掛けており、海上土木以外にも積極的な姿勢がうかがえます。
東日本大震災のときも株価が上がっており、震源地や被害状況にもよりますが、復興関連のイメージが強い銘柄といえるでしょう。
能美防災(6744)
- 市場:東証1部(電気機器)
- 配当利回り:1.79%(3月・9月配当)
- PER/PBR:13.03倍/1.18倍
火災報知設備、消火設備を扱う防災機器メーカー大手です。
消防法の改正により、2011年6月1日から民間の住宅でも火災報知器の設置が義務づけられました。よって復興で新たに家や施設を建設していくとなると、商品の需要増につながります。
災害が発生しなくとも、建物のあるところに防災機器ありです。災害大国・日本で防災の基準が緩まるとは考え難いため、今後も安定した売上が期待できるでしょう。
奥村組(1833)
- 市場:東証1部(建設業)
- 配当利回り:4.16%(3月・9月配当)
- PER/PBR:11.6倍/0.67倍
免震技術に定評がある中堅ゼネコンです。
震災後に手掛けている耐震システム・耐震化工事の需要が見込めるため、地震でポジティブに反応しやすい銘柄です。
ちなみに株価はほぼレンジ相場となっています。配当利回りは高めですが、2018年以降は減配が続いているため、配当株としてはおすすめしません。
アジア航測(9233)
- 市場:東証2部(空運業)
- 配当利回り:2.72%(9月配当)
- PER/PBR:8.32倍/0.94倍
レーザー計測などを行っている会社です。
土砂計測、災害情報システムなど、官公庁向けが過半を占めています。よって国をあげての復興となると出番が増える銘柄と期待できます。
売上高も好調。出来高が少ないのでやや買うのに勇気がいりますが、株価はゆるやかな右肩上がりです。
企業が直接被災してしまったら?BCPをチェックしよう
企業自体が直接被災してしまったらどうなるのでしょうか?たとえ事業内容が復興に寄与するものであっても、災害によって企業の存続が危ぶまれては株価どころではありません。
そこで、企業分析の際にチェックしておきたいのがBCP(事業継続計画)です。
BCPはテロや災害といった緊急事態への対応マニュアル。BCPの有無で万が一のときの対応速度に差がでるとして、中小企業庁は企業へBCPの策定を推奨しています(参考:中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」)。
実際、東日本大震災で東北支社が被害を受けた伊藤忠商事は、BCPを策定していたことで早期に通常業務を再開できた発表しています(参考:伊藤忠商事「東日本大震災への対応について」)。
企業がBCPを策定しているかどうかは、コーポレートサイトの「CSR」や「リスクマネジメント」、IR資料などで確認できますので、企業分析の際にぜひ探してみてください。
まとめ
震災は日本全国どこでもリスクがある災害です。また災害規模によっては国内株の多くが暴落します。
そもそも「株で儲けよう」と考えている場合ではないケースも想定する必要があるでしょう。
しかし、その後の復興・復旧段階になれば株価が上がりやすい銘柄があるのは確かです。
- 建設・土木関係
- 保存食・防災グッズ、防災機器関係
- 地盤調査や測量関係
- 防災・生活用品を販売するホームセンターなど
上記の銘柄に注目が集まる傾向があります。
株の長期保有は、その企業を応援することにもつながります。復興に尽力する企業を応援する意味でも、長期での投資を前提に銘柄分析をしてみるとよいかもしれません!
ちなみに、震災以外の災害については以下の記事も参考にしてくださいね。
関連記事:「大雨・ゲリラ豪雨などで注目が集まる水害関連銘柄を紹介」
コメント